「育休復帰」する不安、迎える戸惑い

いまの職場で自分がはじめての育休復帰者なんです。上司も私をどう扱っていいか困っている感じがします。復帰前面談をしましたが、時短を選ぶかどうかの話くらいで、
復帰後の働き方のイメージがわきません。

これは、私が個人の活動として行っている育休中の方向けの交流会で出る話題の一つです。

発言者を仮にEさんとします。(実際のケースをもとにしていますが脚色しています)

Eさんの会社は自動車部品販売業で、従業員は80人ほど。女性従業員はいますがパートさんが多く、Eさん以外の女性社員は皆年下で独身。本人にとってもはじめての出産、育児休業でしたが、彼女の上司にとってもはじめての「育休から復帰してくる部下」
その戸惑いが、上司からEさんに伝わり、育休復帰への不安が膨らんでしまっているというご相談です。

現在、第1子出産前後の女性の就業継続率は53.1%、就業形態別にみると、育休制度を利用し、就業を継続している正規の職員は59.0%になります。(内閣府 2019年3月作成 仕事と生活の調和 ワーク・ライフ・バランス レポート2018)

そのような状況で、これまでに育児休業から復帰した女性が活躍している企業も多数ありますが、一方でこの発言のEさんの職場のように、お互い前例がなく戸惑う場面も増えているのではないでしょうか。

Eさんの不安はどこから?

「働き方のイメージ」と言っても幅があります。よく聞いてみると、Eさんの場合キャリアデザイン上のロールモデルを求めているのではなく、「不慣れな環境でどうふるまうかのお手本」の存在でした。

子どもが病気になった時仕事はどうしてるんだろう?
出席したい会議が自分のいない時間に設定されているとき、変更を申し出てもいいものなのかな?
帰って保育園のお迎えと夕飯の準備、どう時間のやりくりしているの?

育児休業から復帰する女性が復帰してすぐ頼りにするのはまず、身近なママ社員の姿。子育てと仕事の両立をしている先輩・仲間として、参考にしたり、悩みを共有する相手がいるのはとても心強く、励みになります。

しかし、職場にその先輩がいなかったらどうでしょうか。
「こうすればいいんだ」というお手本がいないこと、それがEさんのいう「働き方のイメージがわかない」不安な状態でした。

上司としてどうEさんを支援するか

育休復帰者にとっても、管理職の立場の方や迎える職場の他の従業員にとっても「前例がない」というのは不安なこと。
その不安を軽減するために、管理職ができることは、まず「よく話を聞くこと」です。
「自分の不安を理解しようしてくれている」「支援してくれようとしている」と伝わることが第一歩です。

弊社の育休復帰社員マネジメント研修でもお伝えしていることになりますが、大事なのは、知ること、恐れないこと、関心を持ち思い込みを捨てる、という姿勢です。管理職の方から、期待を伝えて、相手の状況把握のためにも思い込みを捨てて真摯に「話を聞いて」ください。それで、不安は軽減できることが多いものです。

また、話を聞く中でEさんが「参考となる先輩社員がいない」という不安を伝えてくれたら、同じ職場でなくても、社内の他部署に両立社員がいれば、部署を越えた交流の機会を提案することもできます。(これには、日ごろの社内コミュニケーションもダイジですね!)

「社内に参考にできる両立社員がいない」ということになれば、社外に目を向けるという選択肢もあります。
先ほど書いたように、今は育児休業を取って働き続ける女性が増えており、それに伴って育児休業中の方のための学びの機会、交流会も増えています。行政主催で行われているものもあれば、民間の勉強会もあります。

育児休業中はもちろん赤ちゃんの育児が中心となりそれで気力も体力も使います。大変です。でもそれと並行して、「こんな状況で職場復帰して大丈夫なんだろうか」という不安も生まれてくるし、「早く仕事したい!」と焦る気持ちも出てきます。
同じように頑張っている人がいる、相談できる相手がいると思うと、心強く不安も軽減できます。

Eさんは、今回は社外の交流会で悩みを吐き出すことで、その場にいた育休復帰経験者やキャリアコンサルタントに

「自分がこう働きたいということを伝えてみたら」

「数か月なんとか生き延びることをまずは考えよう」

「自分一人で何とかしようとしないで周りの手を借りたらいいんだよ」

と、助言や励ましを得ることができました。

これは、Eさんが自ら考え動いた結果です。(このケースではEさんの職場は上司の方はラッキーだったと言えますね)

このような機会は社外であってもよいのですがやはり、職場の仲間、上司の理解は不可欠です。

「気分的に楽になる」のと「実際に職場の理解を得て楽になる」のは大きく違います。

前例がなくても今できることからはじめる

「前例となる先輩社員が欲しい」としても、「お姉ちゃんが欲しかった」と言われた親と同様に、どうすることもできませんよね。
前例がないからこそ柔軟に、上司の立場だからこそできることがあります。
「前例がなくても今できることからはじめる」ことからスタートです。

ポイントは
①思い込みを捨て
相手に関心を持ち
「期待」と「支援する意思」を伝えて
真摯に話を聞く

そして、一緒に考える。

今は育児休業からの復帰が両立社員第一号かもしれませんが、いつ誰が「病気」や「介護」との両立を迫られるかわかりません。「誰もが働きやすい職場」のために、育休復帰者への対応が生きてくるはずです。

(キャリアコンサルタント 前田恭子)

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