遠く離れた家族にある日突然「助け」が必要になる時

あなたは何人家族ですか?
そう問われた時、
「はい、夫と子供がひとりいます」
「妻と子供がふたり、そして犬を飼っています」とほとんどの方がそんな風にお答えになるのではないでしょうか。

「はい、夫と子ども、そして別居で夫の両親がいます」

普段の生活で遠く離れた親のことを「家族」と意識しながら暮らしていますか?
私ごとではありますが、恥ずかしながら、この春まであまりそのように意識をして暮らしてはいませんでした。
それが、ある日突然、「家族」であることを意識しなくてはならない時がきます。
今まで元気に暮らしていた遠くの家族に「助け」が必要となった時です。

このグラフは厚生労働省から出ている「家族形態別にみた65歳以上の者の構成割合の年次推移」を示したグラフです。
平成28年では「単独」「夫婦のみ」の世帯が6割近くを占めて、「子夫婦と同居」は11.4%となっています。
親世帯、子世帯と別々に暮らすのがスタンダードとなっているというのは実感としても皆さん感じていらっしゃることと思います。
まして、この地域は地元を離れて就職されている方も多いので、長期連休は親元へ帰省するという方が多いでしょう。

平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフでみる 世帯の状況より

「すぐに来られますか?」

少し私のことを書かせていただきます。
ひとり暮らしの夫の母が、夏前の暑くなってきた頃、熱中症で倒れました。
たまたまデイサービスの日で、連絡が取れないと発見されました。
そんな時でも、「部屋に入っていいですか?」と確認の電話が来ます。
まさに「家族」としての判断を求められています。
幸い、無事でしたが救急車で運ばれ、入院となりました。

その後、経過を知らせる連絡と共に
「すぐに来られますか?」と言われます。
当たり前です。家族が救急車で運ばれて入院したのですから。

それまで、長期連休など自分たちの都合でしか帰省をしていなかったのが、仕事を調整してすぐに帰省しなくてはならなくなりました。
そして「家族」としてさらに様々な判断と対応を迫られます。
「知らない」「できない」では済まされないことが次々とやってきます。
どんなに遠くても、「すぐに行く」ことが求められるかもしれません。

慌てないためにできること

そんな緊急事態になる前に、予期しないできことが急にやってきても慌てないためにできることはあります。

離れて暮らす家族の事、どれくらいご存知ですか?
まずは「よく知る」ことが大切です。
介護が必要になった時に、「情報」は強い味方になります。
一番最初に相談するのはどこか。それを知っておくだけでも一歩が踏み出せます。
40歳以上の人が毎月支払っている介護保険についても、少しでも知っておくと安心です。

コミュニケーションはどうですか?
親は子供に心配かけないように、困りごとやトラブルを抱えていることもあります。
ちょっとした会話からいつもと違うなと分かるくらい話せていると安心です。

そして、
・仲の良い友人、ご近所
・かかりつけの医者
・普段の生活
・家計の状況、書類などの保管場所 など 
少し鬱陶しがられても聞いておいた方がいいことはたくさんあります。

また、家族内で「介護」について話し合いも必要です。
だれがどのように動くのか。誰に連絡してもらうのか。
「妻がやる」「夫がする」心の中で思っていることのすれ違いがあるかもしれませんし、誰を介護するのかにもよるかもしれません。
11月11日は「介護の日」だそうです。「いい日、いい日」からきているそうです)
そんなことをきっかけに話題にするのもいいですね。

会社勤めの方は…

突然の介護…
誰に相談したらいいのか不安になりますね。
仕事はどうしたらいいんだろう、休めるのだろうか、辞めなくてはいけないのだろうか。

そんな時は、一人で抱え込まず、上司に早めに相談しましょう。
そして、会社には国の法律で決まっている介護休業制度・介護休暇制度があります。
制度を上手く利用して「突然」起こる家族への「介護」に対応したいです。

「介護休暇」…要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1年 に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護その他の世話 を行うために、休暇の取得が可能。半日単位の取得もできる。

「介護休業」…労働者が要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害によ り、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象 家族を介護するためにする休業。対象家族1人につき、通算93日まで取得でき、3回まで分割取得できる。

また、地域には「地域包括支援センター」という介護・福祉・保健・医療などの面から総合的に支えるための場所があります。
介護についての情報はそちらで得ることができますし、相談にも乗っていただけます。
介護プランを作成するケアマネージャーさんもそちらに所属されていますので、まずは話を聞きに行ってみてくださいね。
私も実際、豊田市に母を迎えることになったらどうなるのだろうと、市役所で聞いて、地域の支援センターに足を運びました。丁寧に聞き取りをしていただきとても安心できましたよ。

自身が上司の場合も、普段の会話の中で、是非、部下の遠くで暮らす家族のことも把握してみてください。お互い、遠くで暮らす家族も「家族」であると認識していきたいものです。

このコラムは「介護」に関するほんの入り口の話です。
介護離職など大きく取り上げられることも増えてきました。
ご自身の暮らしが大きく変わらずに、仕事を辞めずにすむように考えるきっかけとなればと思います。

(キャリアコンサルタント ちばまゆみ)