男性公務員向けライフデザインセミナー&先輩育休職員と座談会実施レポート
こんにちは。鬼木です。
今年の1月末に実施した研修が、私自身も初体験でしたが、とても素晴らしい場になりましたので事例としてご紹介させていただきます。
*育児休暇取得がキャリアにプラスになるということをかいたコラムもぜひ!
育児休暇は育児部へ異動していることにしませんか
[子育て世代の男性職員向けに研修を実施したきっかけ]
ご紹介する事例のA市役所様へは、毎年、育休復帰職員(女性)向けにセミナーと座談会を実施してきました。
最近では男性職員の育休取得者が少しずつ出てきたり、希望者も増えてきたということもあり、
人事担当者の方が
「人事としても男性職員の育休取得は推進していきたい」
「共働きも増え、育休をとりたい男性職員も増えている」
「でも職場の雰囲気によっては取得しにくそう」
「身近に取得した人がいないので想像がつかないようだ」
という課題を感じていてご相談をいただきました。
また、誰を対象にしていくか
募集の仕方はどうするべきか
なども迷う部分もあって、色々とご提案したり情報交換しながら詰めていきました。
[参加者は、任意で募集し集まった17名]
そして、最終的には
次のいずれかを満たす、受講を希望する30代までの男性職員
①現在、就学前の子を育児中である
②配偶者が妊娠中であるなど、今後育児の予定があり、仕事との両立を目指している
という絞り方で社内公募しました。
職員数約1000人で、男性職員は約500人。
育児休業取得対象者はH30年度で20名程度でうち、実際に育児休業を取得した男性職員は3人でした。
育休取得率15%程度というのは、日本の平均5%ちょっとを思えば高いですが、それでも少ない。
何人くらい参加したいと思ってくれるんだろうか。と正直心配でした。
でも、
人事の方が、この人は出て欲しいと思う方に直接声をかけてくれたり、上司を通して募集を展開するなど
参加しやすい環境もつくっていただき結果17名もの方が参加してくださいました!すごい!
[育児休暇を取得することは、本当に自分の人生やキャリアにプラスになるのか?]
育児休暇を2ヶ月以上取得した男性の中には
キャリアにプラスになった!という人もいれば、むしろマイナスになってしまった、という方もいます。
長い目で見たときには、人生にプラスになるだろうことは分かっていても
目の前の仕事や、プロジェクト、自身の昇進昇格を前にすれば、長期休業することに躊躇する方も多いのではないでしょうか。
(これは、女性にも生じる葛藤ですが、「子どもを産みたい!」と思えば、女性にしかできませんので、最低2ヶ月は休むしかありません...)
と、いうことで、プログラムの中には
仕事と育児のシナジーを見出してもらいながら、自身のキャリアモデルについて考えるというワークショップを入れました。
若手の時は、自分にとって仕事とはどういうものかという「仕事観」が明確であるほど、満足度が高く
中堅以降になると、自分にとってキャリアとは、働くとはどういうものかという「キャリア観」が明確であるほど満足度が高いということが分かっています。
(リクルートワークス研究所「Works106特集1」より)
で、そのキャリア観を明確にしていくためにも、「仕事」と「プライベート」両者を充実させていくことが重要で
今回のテーマである「育児」に参画することは、キャリア観の明確どを高める非常に良いきっかけであると前向きに捉えていただくよう情報提供しました。
さらには、両者にシナジー(相乗効果)を見出すことができれば
目の前の、仕事、プロジェクト、昇進昇格にプラスになると考えることができます。
そしてそのことを、自ら体験することで証明しようとする政治経済界のトップが続々と登場しています。
(今回行政の方だったので、行政トップの方をあえて並べてみました^^)
[キャリアモデルをつくるプロセスが、キャリア観の明確度を高める!]
そんなシナジーを見える化させ、自分に落とし込んでいくのがキャリアモデルです。
例えば、Aさんのキャリアパーツ(職業やプロジェクトなどその人が活動しているキャリアの部品)に
●(土木・建築・福祉に強い)地方公務員
●登山整備ボランティア
があったとして、これに今回新たに
●一児の父/フルタイム妻を持つ夫
というキャリアパーツを組み込んでみます。
そして、それぞれの関係性からシナジーを見出していきます。
このシナジーを見出していく作業が、
キャリア観(何のために働くのか、どうありたいのか)を考えるきっかけとなります。
働く地域の山の整備に関わることで公務員としての務めを果たし地域貢献
登山整備ボランティア⇄一児の父/フルタイム妻を持つ夫
幼い頃から側で父の姿を見ていた子どもが大きくなり、家族で一緒にボランティア活動ができ、趣味と社会貢献と家族の時間を楽しむことができる。
仕事を通しでだけではなく、育児を通して地域課題に目を向け、当事者意識を持って市政に生かすことができる。
[父親になる、育児休暇をとるは、人生を豊かにするきっかけである。]
このように、自身の強みや好きなこと、経験から身についたスキルなどを棚卸して、自己理解を深めながらシナジーを見出していくことができれば
育児休暇を取得することを前向きに考えられると思います。
そして、父親になること、育児休暇を取得することが、自己理解を深める素晴らしいきっかけだということに気付くでしょう。
ワークショップは、まさにそのきっかけにしていただきたいと
キャリアモデル作りに取り組んでいただきました。
座談会もあり、非常に短時間ではありましたが
すぐにつくれる人、本業以外のキャリアパーツが出てこずにうーんとなっている人。
それぞれありました。
でも、これがきっかけです。
ぜひパートナーと対話し、職場の上司とも対話を続け、自身のキャリア観を明確にしていくために育児休暇を堂々と取得していってほしいと思います。
[先輩男性育休者を囲んでの座談会]
メインイベントは、こちら。
数ヶ月の育児休暇を取得した先輩社員が2名来てくださいました。
このお二人がまた、素晴らしい方々。
働く母親たちがこの座談会を見ていたら、多くの人が涙を流して感動したに違いありません!
圧倒的な当事者意識を持って育児と家事と妻に向き合っていました。
それを聞いた、参加者の皆さんからも、どんどん質問が出てくる出てくる。
A「自分は、仕事の都合上産後すぐに取れなかったため産後3ヶ月から取得したが後悔している。産後すぐに取るべきだと思う」
Q「仕事復帰に不安はなかったか」
A「ものすごい不安だった。休む前はしっかり準備して自分がいなくても回るようにしたつもりだったが、いざ復帰になったら居場所があるのかと不安になった」
Q「家事はどの程度までやっているか」
A「ほとんど全部。なんでもやっている。目立つ家事だけじゃなくて、細かいこと。例えばゴミ収集日を把握して、ゴミの分別、ゴミ集め、全てやっている」
Q「料理が苦手で自信がないが、どうしているか」
A「クッ◯パッドがあるから、大丈夫。あとは、宅配とか使うと便利。離乳食なんかも自然派の食材サービスを頼めば安心」
Q「夫婦2人で同じ時期取得しているのか?収入面に不安はないか」
A「多少はあった。でも、働き続けていけばお金はなんとかなるけれど、育児や夫婦関係を大事にするのは今しかないと判断した」
A「交代で1年ずつ取得することも考えている」
Q「復帰後、子どもが熱を出したりしたらどうしているか」
A「お互いに仕事の状況を確認しながら。親が近くにいるので頼むことも多いが、どうしても難しい時は自分が迎えにいくこともある」
などなど。
まだまだ書ききれませんが、皆さん、前向きに育児休暇取得を考えたり、不安や不明な点をクリアにしていく貴重な時間になったようでした!
[研修後アンケートより]
●この研修を受けて、実際にどのような行動を起こしていきたいですか
◆育休を取得するために、育休取得の所属課の仕事を見直す。 |
◆今回は育休を取得することができなかったため、もし2人目ができた場合は取得しようかと考えています。 |
◆家族内で時間の使い方を見直し、人手の足らない時間帯の対応方法を考え直したい。 |
◆昨年に第一子が生まれました。二人目は、将来的に欲しいと考えています。その際には育児休暇を取りたいという思いがありましたが、今回の研修を受けて育児休暇を取りたいと考えています。先輩職員の話や制度の内容を教えていただき、ぼやけていた部分が明確になりました。事前の準備をしっかりと行い、育児休暇を取れる環境づくりをしていきたいです。 |
◆従来は制度があるものの、職場への迷惑をかんがみて、取得する選択はできませんでした。 しかしながら、講師から実体験や、人事課職員からの後悔の念を拝聴した結果、育児休暇は非常にかけがえのないな時間であると改めて感じ取得を前向きに検討するようになりました。 |
◆育児休暇の取得ができるかは分からないが、育児を中心とした生活全般において今まで以上に積極的に関わることを目指し、今まで以上に与えられた休暇を有効活用していきたい。 |
◆妻が来年度から職場復帰するため、お互いの育児休暇の取り方を共有したい。 |
◆育児について、日本社会の問題は制度の整備が先行し、男性のマインドがそこに追いついていないことだと思います。自分にとっては、本研修で先生や他人の話を聞くことが自分のマインドを客観的に見直すとてもいい機会になりました。夫婦で話し合った時には理解することができなかったことが、他人の言葉を通すと不思議と理解することができました。マインドを変えていくためには、こういう時間も必要なんだということを実感しました。 |
◆この研修を受けたことで、これまで以上に家事育児に当事者として参加できるように感じています。来年度育児休暇を取得する私の役割は、自分だけでなく、職場・社会にその素晴らしさや問題点を伝えていくことだと考えます。これまで、シナジーという観点でものごとを捉えたことはあまりありませんでしたが、この知見によって育児にさらなるやりがいを見出すことができ、ポジティブに育児に取り組めると思います。職場や社会に良いシナジーを持ち込めるように、真摯に育児に取り組んでいこうと思います |
◆自分自身では育児休業を取得する可能性は低いですが、他者の取得に対する理解を深めることができました。また、キャリアの意味を再認識し、育児に対してより積極的に関わりたいと思いました。まずは料理以外の家事全般を頑張ります。 |
◆育児への積極参加と後輩職員の育休取得時のサポート |
◆妻側も自分側も実家が病気がちなので、2人目が生まれた時は育休を取得したいと感じた。 |
◆子どもとの時間の大切さを改めて痛感しました。今までは妻を手伝うという感覚がどうしてもありましたが、手伝うために休みをとるのではなく、子どもとの時間を作るために休みをとるという発想を、得ることができました。育児休暇や部分休業も視野に入れながら、有給休暇なども活用して、子どもとの時間を作ることに肯定的な考えを持つことができました。できれば、休暇をうまく利用して子どもとの時間を作っていきたいと思います。 |
◆次年度に育児休業を取ることについて、真剣に検討してみたいと思いました。 |
◆プライベートでの出来事と仕事について、関連づけられることがないかを意識して日々を過ごす。また、その中で自分のキャリアパーツを見つけ、自分なりのキャリアモデルを確立したい。 |
◆仕事を計画的に行い、同僚や上司と調整したうえで、積極的に育休を取得していきたい。 自分が取得することで。将来、下の世代が取得する際に理解や協力ができるようになりたい。 |
◆自身が育休の取得を考えるだけでなく、今回知り合った同世代の子どもをもつ同僚をはじめとして、情報交換やつながりを増やしていきたい。 |
●これからのキャリアを考えていく上で自信が感じている課題など、自由に記入してください。
◆家庭とキャリアデザインはきってもきれないことだと思います。両方のバランスをとり生活していくには、事前の準備や考えをまとめておくだけでなく、家族と考えを共有する必要があると考えます。 |
◆フルタイムの共働き夫婦のため、夫婦どちらも職場に復帰した後の生活に不安があります。妻の会社では、在宅での勤務が始まり、新しい働き方が社会に認められつつあることを実感しています。仕事と家庭の両立が課題と考えていますが、制度は日増しに整っていくと思うので、上手に利用して課題を達成していけたらと思っています。 |
◆4月から妻が育児休業から復帰することから、現状家事と育児の大部分を任せてきた反省と今後の不安な部分があります。それでも、キャリアの総体で育児を捉えていけるようにしたいと思います。 |
◆採用後まもなく子どもを授かり、育児休暇を取れれば、給料の70%の受給でも影響は大きくないが、採用後10数年も経つと、それよりは大きくなる。30代中盤から育児休暇を取ることは金銭的にも難しいと感じている。 また、この制度には多分に上司の理解力が必要不可欠であるため、管理職向けに知識を与える研修があると良いと感じた。0歳児を育てる自分が、始業前時間外勤務をし、定時で帰宅することはできないか上司に相談したが、始め難色を示されたことは少なからず困惑した。その点で、国が施策として積極的になっていることは追い風になっていると感じた。 |
◆4月から妻が育児休業から復帰することから、現状家事と育児の大部分を任せてきた反省と今後の不安な部分があります。それでも、キャリアの総体で育児を捉えていけるようにしたいと思います。 |
◆これから自分の身に起こる全ての出来事に対して、きちんと向き合い、前向きに捉えられるかどうか(逃げたり、楽なほうにながされてしまわないかどうか) |
育児はキャリアの一部であるという認識が生まれ、育児休暇を前向きに取りたいと考える人が増えたようです
まだまだ壁はあるものの、事前に準備をしていくこと、情報を常にキャッチアップしていくことや周囲と情報交換をしていくことが大事ですね。
より豊かなキャリアを、人生を築いていくために頑張ってください!ありがとうございました。