自動車製造会社A社に勤める夫をもつ妻への ワークライフバランスに関する アンケート調査
愛知県三河地域で女性活躍や働き方改革に関する研修コンサルティング事業を展開する当社は、A社様の取り組みが他の企業の取り組みや、女性の働き方に大きな影響があると考え、2年前にも同様のアンケート調査を実施。その後、在宅勤務制度や新たな裁量労働制、意識改革などの働き方改革への取り組みを受けて定点観測を行う目的で質問項目を増やし、内容を見直しながら2度目のアンケート調査を行い、150名の回答を得ることができた。
[1]調査概要
実施方法|主にインターネット、SNSで依頼しアンケートフォームに回答
回答者 |150名
調査期間|2018年5月9日~5月22日
実施者 |株式会社eight 愛知県豊田市西町2丁目33番地1 TEL 0565-41-8871
豊田市近郊に現住所のあるA社に勤務する夫を持つ育児中の女性に回答を依頼した。SNSを通じての回答依頼であ
るため、回答者にインターネット利用者という偏りはあるが、昨今のインターネット利用率を考慮しても十 分な回
答結果を得られたと考える。以下、結果について要約し、データを抜粋して掲載。最後のまとめでは提案もさせて
もらっている。今回の調査結果が少しでも女性活躍推進の参考になれば幸いである。
[2]回答者について
①回答者属性
豊田市近郊の30代~40代が多くを占め、子育て中の女性が回答 ()内数字は前回調査数値
回答者の72(74)%が豊田市在住で、他は近隣の市町村に在住(図1)。出身地が豊田市の妻は27%、その他愛知県含
む東海地方、関東甲信越出身者と続き、市外県外出身者が大半を占める(図2)。 年代は30代が70(69)%、40代が
22(12)%、 20代が7(14)%(前回と比較し40代回答者増、20代回答者減:図3)。子の人数は2人が55(38)%最も多
く、続いて 1人が27(48)%(前回と比較し子ども二人世帯回答者が増、一人世帯回答者減)(図4) 末子の年齢を見
れば、7割強が未就学児のいる家庭であり(図5)、9割以上が核家族世帯となっている(図6))ことが分かる。
今回の調査も、出身地を離れてA社勤務の夫と結婚し、核家族の中で子育てをしている女性たちが回答者の多数を占
めていることを強調しておきたい。
妻の就業状況とキャリア感
②「働いていない」妻は20-30代、末子の年齢が未就園児の場合がほとんどで、「働きたい」という意欲が強い。「働いている」妻は経済的理由よりも、やりがいや社会貢献が理由で就業している。
何らかの形で仕事をしている人が63%と前回調査と比較して12%増加(図7)。ワーキングマザーの回答者が多い
のも今回調査の特徴となった。
妻の年代別就業状況では、20代のうち6割が「働いていない」と回答。30代から40-50代と年代が上がるにつれて
「働いている」人が7割以上となり、さらに働き方が多様化していることがわかる(図8)。
就業状況別に「働く意欲」について聞いたところ、条件次第という回答も含めて「働きたい、働き続けたい」とい
う回答が全ての就業状況で過半数を超えた(図9)。働いていない人の中で「働きたくない」と答えた人がわずか
9%であったことからも、妻の働く意欲と実際に大きなギャップがあることもわかった。
「働いていない」妻の7割に未就園児の末子がいることがわかった(図10)。先のデータと照らし合わせると、働
く意欲はあっても末子が幼いために働いていない状況がありそうだ。一方で正規社員においても未就学児をもつ女
性が多くの割合を占めている。個人事業主やパート・アルバイトの就業形態を見れば、末子の年齢は様々。正規社
員で続けることの難しさを感じ取れるデータとなった。
「働いている」妻の働く理由について聞いてみると、「お小遣い稼ぎ」「生活費」などの経済的理由よりも、仕事
の面白さや好き、社会貢献などの自己実現を理由とする回答が上回った(図11)。
図9でも明らかになったように「働いていない」妻のうち8割以上が「働きたい」と答えているが、なぜ働かない
のか理由を聞くと「家事育児を重視したい」という回答が多数を占め、次に「預け先がない」「時間がない」と続
いた(図12)。
夫について(妻が回答)
③夫の年齢も30代-40代が9割近く、日勤帯の担当職、主任職クラスが多数を占める(図13、14、15)。
④夫の働き方について(妻が回答)
2016年調査時と比較して夫の1日の平均労働時間が大きく減少。一方で日勤帯の主任、管理職クラスにおいては12時間以上と回答する割合が高く、主に事技職については責任の重さと労働時間が比例していることがうかがえる。
妻目線から夫の1日の平均労働時間を見てみると、2016年調査の時と労働時間が減っていることがわかる(図16)。
特に12時間以上働いている夫は38%から22%と大きく減少。働き方改革が進んだ成果が表れているのかもしれない。
しかし、一方で勤務体系別役職別平均労働時間で詳しく見てみると(図17)、日勤帯の主任、管理職クラスでの長
時間労働傾向が顕著であることがわかる。回答者世帯の5割が主任、管理職クラスであることも踏まえると、働き方
改革による労働時間削減の次のターゲットとして事技職の主任管理職クラスへの働きかけを強化する必要がありそうだ。特に未就学児の末子をもつ核家族世帯が多く、妻が「働きたいのに働けない」理由として「家事・育児」の
負担が大きいことは前述の通りであるため、夫の労働時間削減が家事育児の時間に寄与する可能性があるのなら、
ぜひ力を入れて欲しい。
⑤夫のワークライフバランスと制度利用状況について(妻が回答)
3歳以下の子を持つ夫でも「仕事優先」「時々仕事優先」という回答が多く、働き方に関する制度利用は進んでいない結果に。制度について「全く知らない」「あまり知らない」という回答が約6割と妻の認知度の低さも明らかになった。
図18は妻目線で夫のワークライフバランスについて答えてもらい、末子が3歳以下と全体を比較した。「常に仕事
優先」という回答では3歳以下の末子のいる回答は全体を下回ったものの、「常に仕事優先」「時々仕事優先」を
合わせれば、ほぼ同じ状況である。
こうした状況の中、妻は夫に対してどのような働き方や生き方を望んでいるのだろうか。図19では「妻が夫に望む
ワークライフバランス」について集計。「自分のやりたいことや健康を大事にして欲しい」「会社の制度や福利厚
生を使ってワークライフバランスを実現して欲しい」に対して88%が「そう思う」「ややそう思う」と回答。給与や昇進昇格、家事育児への貢献よりも夫自身のキャリア(仕事を含めた人生)を大切に思っていることがわかった。
しかしながら、その利用して欲しい
「制度や福利厚生」について、内容
や利用状況についての妻側の認知度
が低いという事実も判明。「全く知
らない」「あまり知らない」と、約
6割が回答(図20)。さらにいえ
ば、「制度や福利厚生」の利用を希望する妻であっても制度の認知度が低いことも分かった(図21)。
妻が知ろうとしていないのか、夫が伝えていないのかは分からないが、A社が会社をあげて働き方改革を推し進め、大企業ならではの制度や福利厚生の充実を図っている中で、家族、とりわけ妻の認知度が低いのは残念な部分ではある。
図22は、夫の制度利用状況だが、妻の認知度がそもそも低いからか利用者が少ないという結果になった。その傾向は役職で差が生じてはおらず、それぞれ約6~7割が制度を利用していない状況(図23)。
妻側の回答であるため事実と異なることは前提としても、全体的に見て制度が使われていない傾向があるようだ。また、妻が働きたい、働き続けたいと思った時に夫の会社に求めることとして、制度利用促進にもつながるであろう「パートナー(夫)の上司の理解」が30%と最も多かったことも特筆すべきであろう(図24)。
妻のワークライフバランスについて
⑥育児のサポートは夫や親などから得られているが、家事は妻が多くを担っており、
就業している妻であってもその傾向は変わらない(図25,26, 27,28) 。
夫の家事参画について現状と希望を10段階で質問。現状では2~3が多く5以下がボリュームゾーンに。4以上を希望す
る妻の思いとズレが生じている(図25)。一方で育児については現状2~8までバラツキがあり、妻の希望も5又は8にポイントが偏りつつも4~10までバラツキがあった(図26)。いずれにしても夫へ家事育児への参画を今よりも多く望ん
でいることがわかる。
9割以上が核家族であり7割以上が未就学児童の末子がいる家庭で、夫の家事育児のサポートが弱いとなれば他に頼り先があると心強い。夫以外のサポートの有無について尋ねたところ、家事は約6割、育児は約3割が夫以外のサポートがないと答えている(図27)。さらに就業していてもその割合はほとんど変わらない(図28)。妻が「働きたい、働き続けたい」と思っても、働くことが難しいのは家事育児の負担が大きいことが良くわかる。A社の社員の世帯年収は高いというのが世間でも言われている事実だが、有償サポートの利用率が低いのも印象的である。
家事育児について方針や役割分担を夫と話し合うかについて(図29)は、特に家事について「全く話をしない」「あまり話をしない」と答えた妻が約5割となった他、家事育児共に「常に話をする」夫婦は非常に少ないことがわかった。共働き夫婦の場合「時々話をする」割合が高くなり、それは家事、育児共に同じ傾向が見られた(図30)。